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第7回読書講座を終えて [先生から]


初秋のみぎりに、秋の草花の薫りが嬉しい今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
子どもたちも、文化祭、体育祭、学習発表会、テスト、部活等々、てんてこまいな忙しさでなかなか落ち着かない日々を送っていますね。しかしながら、「忙中閑あり、閑中忙あり」とも申しますように、忙しいからこその喜びや愉しさというものもあります。みなさん、大いに忙しく活動してくださいね!

さてさて、今夏もまた、読書講座を開催しました。今回もたくさんの生徒が参加してくれて、とても楽しい時間を過ごすことができました。

今回、取り上げた本は、以下の三冊です。
Sコース(中高生向け)『砂糖の世界史』(川北稔、岩波ジュニア新書)
Aコース(小学5,6年向け)『二分間の冒険』(岡田淳、偕成社文庫)
Bコース(小学3, 4年向け)『ルドルフとイッパイアッテナ』(斉藤洋、講談社)

今回で読書講座も7回目となりました。
読書講座をやり続けてきて「今回は成功だな」と思うときは、
子どもがぼくより本の中身を面白がってくれています。
毎回、読書講座で取り上げる本を書店や自宅の本棚の中から選ぶときには、
もちろん、勧める側のわたしが「面白い」と思うものを選ぶわけです。
私が面白いと思わないものは、勧めることはできないし、そもそも自分が
やる必然性はないですね。

しかし、大人の自分が面白いと思うものであっても、子どもにその面白さが伝わらなければ、子供とその価値を共有できなければ、意味がありません。

だから、いつも本を選ぶときは「私」と「子ども」が面白がり方を共有できなければ
ならない。もっと言えば、ぼくよりもずっと面白がってくれなければならないのですね。

小学校低学年向けの『ルドルフとイッパイアッテナ』をとりあげたクラスでは、明らかに子供たちが本の中身をぼくよりも「面白がっていた」ことがよくわかりました。

みんな「ドラえもん」にまつわるあるセリフ(気になる方は本文を読んでみてください)を言うイッパイアッテナのシーンや、ブッチーという飼い猫のひゃうきんなセリフのところで、示し合わせたように、本当に楽しく笑っていました。

また、前回の読書講座のあとに「先生、『雨降る本屋』の続編、読んだよ!」という声が口々に聞かれたのと同じように、「次の読書講座は『イッパイアッテナ』の続きをやろうね!」という子供たちの声を聞いたときは、読書講座をやってよかったな、と嬉しい気持ちになりました。

かつて読書を脳科学の知見から鋭く分析した『プルーストとイカ』(メアリアン・ウルフ)という本がとても話題になりましたが、そのなかで、著者は本を読むことの究極の価値を「本の中身や物語の本筋とは関係のないところへ、思考が飛躍すること」だと論じていました。

つまり、読書の本質は「知的な寄り道」にある、ということです。

子どもの『ルドルフ』を読んでいるときの面白がり方を見ていると、ほんとうにそのことがよくわかりました。みんな大人の私が知らない、ここではない「どこか」へと、空想を巡らせているのですね。

『ルドルフ』には本筋から外れる刺激をくれる知的なネタが張り巡らせてあります。

主役(主猫?)であるルドルフの名前の元ネタであるハプスブルク家の「ルドルフ」について、岐阜県の地理について、「ドラえもん」について、美味しいシチューについて、魚屋のおじさんについて、外国について、黒猫がなぜ縁起が悪いかということについて、ケンカの必勝法について、そして愛や友情や孤独や勇気や、生きることの哀しみや愉しさについて。

「本から何を読み取るかは読み手やその力量にかかっている」といったのは誰だったでしょう。「本は読み手の数にだけ開かれている」といったのは?

そんな先人の言葉を思い出すような読書講座ではなかったかと思います。

本を読んでお腹を抱えて笑ったり、作中の食べ物を見てお腹を空かしたり、何だろう?と話の本筋とは関係ない空想へと思いを巡らせられたのなら、それは子どもにとってかけがえのない読書経験になったということができるのかもしれませんね。

また、年齢を重ねるにつれて、読む本も変わってきます。
中高生のクラスでとりあげた『砂糖の世界史』はかなり読み応えのある本でしたが
いずれ、このような硬派な書においても、主催者を上回る面白がり方をする子が
もっともっと出てくるのではないか、と期待しています。

それはとても楽しみなことです。

次回の読書講座は12月、1月の冬休みに開催予定です。

また皆さんと一緒に本を読めることを心待ちにしています。

ではまた会いましょう!


永澤


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